昼間、あまりの暑さに涼を求めて公園の日陰にあるベンチに座った。
日向と日陰の温度差はすごく、日陰に入るだけでかなり涼しく感じたが、それでも汗はなかなか引かない。歳を取ると若い頃とは汗の質感が違う。若い頃はさらっとしていて蒸発しやすく、熱交換しやすい感じがするが、30歳を過ぎてくると、それはどろっとしていて、風に当たっても全然蒸発しない。まるでサラダ油が身体から滲み出ているかのようだ。
「昔はここまで暑くなかった」
などと言う事があるが、僕が思うにヒートアイランド現象だとか、たしかにそういうのもあるかもしれないがそれ以上に、身体から出てくる汗の質が歳を取るごとに変化していって、昔より暑く感じるんじゃないだろうかと。
こんなに暑くても、夜になって少し風が出ればとたんに涼しくなる。日中がこんなに暑いのは、もしかしたら地球の軌道が太陽に向かって落ちているとか、もしかしたら太陽が人間の予測よりもの凄く早く膨張しているんじゃないかと、いらん心配をしてしまうほど、今夜はとても過ごしやすい夜である。
仕事中に時間を潰す為に一人で喫茶店に入る事が年に2度ほど、ある。少ない経験から言わせてもらうと、だいたいどんな時間に喫茶店に入っても、結構店内は込み合っている。
今日も出先の会議までの時間が40分ほど開いてしまったので、駅前の喫茶店に入った。チェーン店で何処にでもある喫茶店だった。喫煙席は奥まった所にあって、僕の座った席は店の一番奥から店全体を見渡せる席で、空席の全くない店内を見渡せる場所だった。
店内をしれっと見渡すと、新聞を読むスーツの男性やら、競馬新聞を枕に眠ってしまっているオッサン、会話に夢中な妙齢の女性の集団、勉強をしている大学生風の男の子など、様々な人々が午後の喫茶店に集っていた。
僕の席の目の前に、悠々と雑誌を読む若い女性がいた。営業中の休憩なのだろうか、アイスコーヒーを飲みながらゆっくりとページを捲っていた。まあ、なんと優雅な職業なのだろうと、半ば僕はあきれながら彼女を眺めていると、雑誌を読み終わったのか、カバンから筆記用具を取り出した。ああ、仕事をするんだな、と思って見ていると、カバンの中から最後に取り出したモノは白紙の履歴書だった。
彼女は黙々と履歴書を書き出した。優雅な職業でもなんでもない。考えると、就職活動中なのかもしれないし、転職を考えているのかもしれない。もしかしたら厳しい就職活動の合間のほんの少しのホッとする一時であったかもしれないし、そうでないかもしれない。自分の想像出来る範囲なんてたかが知れている。人間模様は色々である。僕は自分の短絡な思考を少し恥じた。