ひみつきち
「ひみつきち」とは、なんと素晴らしい響きだろう。その言葉の響きで気持ちは高揚し、その文字列を見ると興奮する。そんな不思議な力が「ひみつきち」には存在する。そして、実際、僕たちはその憧れに自我を我慢出来ず「ひみつきち」を子供の頃に作ったりもした。それはまったく「ひみつ」ではない代物だったが、「ひみつのようなもの」「ほかの友達には、ひみつ」という「エセひみつ」で十分満足だったし、それ以上を求めなかった。いや、子供の技術力では無理という話もあるが、でも実際、本当に完璧に「ひみつ」だったら、それはそれで面白くないのだ。「じゃー放課後、ひみつきちでなー」とかと大声で喋ってしまうのである。「ちょ、それってぜんぜんひみつになってな……」とか思っても、決して口に出してはいけないのである。暗黙のルールなのである。どれくらい暗黙なのかと言うと、引くと部屋が真っ暗になってしまうくらい暗黙なのである。あ、それは暗幕か。

